胃癌
受け止め難い診断結果
受診案内表に記載されている不自然な予約
ついに待ちに待った胃カメラの診断結果の日。
今日、胃潰瘍と診断されれば、ここ1ヶ月の不安はここで終了だ。
診察券を通して、予約内容と時間が書いてある受診案内票を見ると、ぞくっとした。
10:00 W医師(初診時の若い女医)
10:30 T医師(初めてみた男性の医師)
え、なんで2回も診察・・・!?
すぐに10:30からの診察予定の医師の名前を調べると、その病院の消化器内科の科長というのが分かった。
これって、もうダメなヤツじゃん・・・。
これから告げられる事の内容が容易に想像できた。
旦那に写メを撮って、LINEする。
『診察前だけど、これだけで怖い』
胃癌と告知されて・・・
診察前の待ち時間は嫌な言葉ばかり検索してた。
受付の番号が表示がされ、診察に入り、医師の説明を聞く。
W医師は、胃カメラの画像をパソコンの画面で見せながら、説明を始めた。
『ひだが集中しているこの部分ですが、癌の可能性が高いです。ただ、画像を見る限り、まだそこまでは深くなく、早めに見つかったものだと思われますが・・・。』
癌なの・・・、私、癌だったんだ。
死んじゃうのかな。治るのかな。
まだ、若いと思ってたのに・・・。
気がつくと涙が頬をつたっていた。
医師が無言でティッシュをそっと渡してくれた。
止まらない不安
『先生、癌というのは分かりました。まさかスキルスとかではないですよね??』
『病理検査の結果は出てないのですが、今の段階では可能性がなくはありません。今日を含めて、これから、私の上司にあたるT先生の診察を受けてください。』
『分かりました。今はすごく怖いですけれど、早めに見つかったことはラッキーだと思います。見つけてくださって本当にありがとうございます。』涙をボロボロこぼしながら、見つけてくれたことへの計り知れない感謝の気持ちが溢れてきた。
W医師に、お礼を言って、診察室をでてからは、頭を殴られたように、ぐわんぐわんと目が回っていた。
涙も溢れてくる。かたかたと震える手で旦那にLINEする。
『悪性だったよ』
怖かった、スキルスを否定されなかったことが、恐ろしかった。
待たずしてT先生の診察になった。
主治医の交代
若い優しそうな女性のW先生とは違い、ややふっくらとしたTHE 医者という感じで、病の不安をかき消すような安心感を漂わせたT先生。
『W先生の診察で聞いていたと思いますが、胃カメラの検査で見ると、癌の可能性が非常に高いです。』ともう一度詳しく説明してくれるとともに癌の種類や状態別に関する説明も受けた。
現段階では、おそらくリンパ節までは達してないと思われるが、再度、胃カメラの超音波検査を来週行うとのこと。それにより深さを調べるとの事。また癌細胞の種類によっては、手術も内視鏡でできるということ。
病理検査の結果はそれまでにでるとの見通しだったが、
『来週まで、分からないのは不安だよね。ちょっと待ってて』
といって、どこかに電話をし、病理検査結果を至急出すように指示した。
『連日で申し訳ないけど、明日来れる?今日中に病理検査結果をだすので、明日、さらに詳しい説明が出来ると思います。』
仕事をぬけてばかりで申し訳ないと思いつつ、自分の体を優先することにした。
涙を拾いながら『先生、私はスキルスの可能性は高いですか?』と再度聞いてみると
T先生は
『その可能性は、私は低いと思います。スキルスっていうのはね硬い癌と書くのだけど、今の段階ではそういう症状はなさそうです。大丈夫、ちゃんと治りますよ』
と、最後に一番聞きたかった言葉を添えてくれた。
きっと、大丈夫。
いや大丈夫。
お医者さんが大丈夫っていうときは、本当に大丈夫なんだ。
そう言い聞かせて、気持ちを立て直した。
その日は会社に帰社し、上司と同僚に報告し、早退させてもらった。
帰りに、生クリームと牛乳を買った。
きっと旦那は『今日は何を食べたい』って優しく聞いてくれるだろうから
『K(旦那)の作ったカルボナーラ』っておねだりするんだ。